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崖の上のゴースト③

2月某日、日曜日。

J村役場職員S、K、Yの3名は、
高台に位置するK神社でお参りを済ませ、
K神社とH寺の間の路地をさらに北へ。

谷地(やち)と違って、
高台の路地は、
細く曲がりくねっていても
どこか乾いて明るい雰囲気があるから不思議です。

東西に延びる高台の、
幅の広い尾根を北に突っ切り、
急で長い三日月坂を下って再び谷地に。

そのまま進んで、午前11時頃、
昭和37年(1962年)2月に入居開始になったという
A台団地のある高台の麓に到着。

崖のごとく切り立った石垣を巻く坂を上がって
団地の高台に到着、
歩いてきた道筋をふり返ると、
早春の眠くなるような日差しの下、
家々に埋め尽くされた谷地と高台の帯。

9d3c240f.jpeg







団地の中を散策、梅を植えた一角にはベンチがあり、
ベンチには日なたぼっこをするおばあさんの2人連れ、
大きなレンズを付けた立派なカメラで、
梅の花の写真を撮るおじさんも。

同じ形をしたたくさんの棟と、
ベランダに干された布団、洗濯物、
広い芝生の庭、松やケヤキ、ヒイラギの植え込み・・・

この団地は、子どもの頃に私が暮らしていた、
C県K市のT台団地とそっくりのロケーション。

ちなみにT台団地の入居開始は、
昭和39年(1964年)の4月、
これは私が生まれる3年前の春のこと。

私は7歳までここにいたんですが、
当時の団地と言えば、子どもだらけで。

男の子も女の子も、
小学校6年生のガキ大将とお姉さんを頭に頂いて、
そこらじゅうを駆け回ってました。

 (なつかしいなあ・・・)

昔のことを思い出しながら、
庭と棟の間に延びる小道を歩いてたとき、
団地と言えばやはりこれも付きものの、
小さな公園が目に入りました。

 (どれどれ・・・)

67535622.jpeg







コンクリの囲いの中に砂場、
砂場の真中に奇妙な形をした遊具。

 (すごい格好をしているなあ・・・)

d84d10f1.jpeg







まるでダリの絵の中に出てくる
オブジェのような形をした遊具を、
ひとしきり鑑賞してから後ろをふりかえると、

 (あ゛・・・)








4b216da8.jpeg







そうです。

私たちは、気がつかないうちに、
崖の上のお化けに遭遇していたのでした。

あまりの事態に、私も、職員KもYも、
その場に彫像のようになって凍りつき、、、

一瞬の後、9歳の職員Yは、お化けに登り始めました。(笑)

 「そろそろ行こうか」

職員Yに呼びかけて再び出発、後にしてきた公園をふり返ると、

9002bf1a.jpeg







人影は、なし。

今から35年くらい前。

きっとこの公園には、
子どもたちがうじゃうじゃいたはず。

 (みんな、どこにいっちゃったんだろう?)

そう思ったとたん、
中くらいのピコピコハンマーで1発ハタかれたような衝撃が
後頭部に走りました。

崖の上のゴーストは。

長い年月をかけて、
職員KとYという新たな仲間に巡り合い。

いつの間にかおっさんの姿に化けて、
子どもたちの消えた公園を眺めている。

この、私なのか?・・・



2月の日曜日の真っ昼間の、
何やら怪談めいた散歩の話には、
気の利いた後日談のようなものはありません。

私は勤勉な人間に戻って、
日々の糧を得んがために働いています。

ただ、こうして、
文章にまとめてみてあらためて思うのは。

お化けになるのも、
それほど悪くないなということです。

ほんとですよ。

ぜんぜん悪くないです。

みなさんも時々、
退屈な人間をやめてみてはいかがですか?


(おしまい)


********************************************

※2つの団地の入居開始年月については、
 団地の素晴らしい写真がたくさん載っている
 下記のHPを参考にさせていただきました。

 謹んでお礼を申し上げます、
 ありがとうございました。

 ●団地百景
 http://www.danchi100k.com/
 

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